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「山村若佐紀 上方舞 夏の会」
国立文楽劇場小ホールにて、毎年恒例、師匠主催の「山村若佐紀 上方舞 夏の会」が行われました。
全37番。
私の門下からも、名取2名を含む6名が勉強させていただきました。
11時開演なのですが、9時に出演者と手伝いの名取は楽屋入り。
白塗りのお化粧をしていただくので、まず浴衣に着替え、石けんでしっかり洗顔します。
出演順にお化粧、そして裾引き衣装の着つけ。
最後にかづらを被せていただいて本番です。
『都鳥』『ぐち』『藤娘』『茶音頭』、それから、若静鐘『岸の柳』若静和『鐘ヶ岬』。
お目だるいところもあったかと思いますが、それぞれ一所懸命の稽古の成果を発表できたのではないでしょうか。
終演後は応援にお越しくださった皆さまと写真を撮ったり、お化粧を落としてくつろいだり、お弁当を食べたり。
本番前とうってかわり、皆ほっとした笑顔です。
そうこうしているうちに、私も出演時間が迫ります。
弟子たちの舞台の合間に拵えをしていただき、あわただしく出番を迎えました。
今回舞わせていただいたのは、地唄『ささの露』。
師匠の振付で、師匠の十八番でもあります。
ヤマタノオロチを退治できたのは酒の力ではないか、李白は酒のおかげでよい詩が書けたのではないかと、お酒を讃える曲です。
神仏を語って重厚にはじまり、大蛇退治の様子、芸妓の酔態、途中で男の振りもあり、最後は華やかな扇遣いで舞い納めになります。
私自身は恥ずかしながら、ほとんどお酒がのめないので、このような洒落た、粋な曲は本当に難しく感じました。
課題はたくさん残りますが、おかげさまで「柔らかくて新境地」「扇扱いがよい」「実際に酔ってるみたいだった」など、嬉しいお言葉もいただきました。
先輩方の舞台をいくつか拝見し、有志の門人と堺筋本町で軽く打ち上げ。
今年も同門の皆さまや弟子たちと、宝物のような時間を過ごすことができました。
東京からの遠征組をはじめ、ご来場くださった皆さま、お気にかけてくださった皆さま、ありがとうございました。
また、まる一日舞台袖で見守ってくださった師匠に、心から感謝申し上げます。
「怪談の夕べ~舞とおはなし」
YFオフィスさま主催、玉造さんくすホールさまにて「怪談の夕べ~舞とおはなし」を開催させていただきました。
まず、地唄舞『黒髪』。
帰ってこない夫をずーっと待っている妻…も、現代の感覚ではホラーなのかもしれません。
そして、実話怪談ブームの第一人者である、中山市朗先生による怪談をたっぷりと。
今回は、私が貴船神社の丑の刻まいりを題材にした『鉄輪』を舞わせていただくので、中山先生には貴船神社や、呪いについてのお話をお願いしました。
身の毛のよだつ恐ろしい内容ですが、民俗学としての面白さもあり、はじめて怪談をお聞きになったお客さまからも大好評でした。
それから休憩をはさみ、地唄舞『鉄輪』。
捨てられた妻が、貴船神社におまいりして後妻を呪い殺し、次は夫を…というところで安倍晴明に力を封じられて退散する、という内容です。
そのものずばり、五寸釘を打ちつけたり、後妻の髪を自分の手にからませて打ち据えたりと、凄絶な振りがついていますが、前半の貴船の山中を歩いているシーンでは、抑えた哀しみ、静かな怒りが表現され、本当に名曲だなあと、私自身も舞わせていただける幸せを噛みしめる曲でもあります。
中山先生のお話のあとでしたので、より『鉄輪』の世界をわかりやすくご覧いただけたのではないかと思います。
あいにくの大雨でしたが、お客さまからは多くのあたたかいお言葉をいただき、また会場の玉造さんくすホールさまは親身にお世話してくださいました。
唄と三味線を担当してくださった野田友紀先生にも感謝です。
改めまして貴重な機会をつくってくださったYFオフィスさま、そして足元お悪いなかご来場くださった皆さま、まことにありがとうございました。
東京稽古場ゆかた会
神楽坂の料亭・志満金さんで「第6回 東京稽古場ゆかた会」を開催させていただきました。
まず若静紀の『松竹梅』にておひらき。
それからグループ稽古の、東急セミナーBE二子玉川校の有志の皆さんで『潮来出島』。
扇を放ったり、全員の間を揃えたりと難しいポイントがたくさんあるのですが、初舞台の方をふくめ見事にお稽古の成果を発表されました。
そのあとは、個人稽古の皆さんが、ひとりずつ入門順に舞っていきます。
今年は、ゲストに三遊亭わん丈さんにお越しいただき、会場中で落語を楽しみました。
最後は若静京の『雪』、若静雪の『京の四季』で終演。
若静紀のご挨拶のあと、上方の芸能ですので毎年恒例「大阪締め」にて解散になりました。
お客さまがお帰りになってからは、出演者の打ち上げ。
志満金さんの美味しい鰻のコースをいただきながら、今日の感想やら今後の抱負やら。
わいわいと笑いの絶えない、楽しい会食でした。
また来年に向けて、一同精進してまいります。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
よし梅「怪談~激情の泪が修羅を生む」
人形町の老舗料亭・よし梅「怪談~激情の泪が修羅を生む」にお越しくださった皆さま、ありがとうございました。
よし梅さんでの公演は3回めなのですが、若女将の名プロデュースにより、毎回おかげさまで早くに完売し、キャンセル待ち。
有形文化財である素晴らしいお座敷と、あたたかいお客さまとのご縁を、本当に幸せに思っています。
今回は源氏物語から題材を得た『葵の上』を舞わせていただきました。
唄と三味線は、いつもお世話になっている、村澤丈児先生。
光源氏の愛人であった元東宮妃の六条御息所が、正妻の葵の上を生き霊となって責め苛み、儚くしてしまう内容です。
そして、前回もご一緒させていただいた、講談の神田山緑先生は『四谷怪談』を。
大人気の山緑先生、控え室で拝聴していても大迫力でした。
終演後はお客さまから嬉しいお言葉を頂戴し、ぜひ来年も、とのお声も。
また、よし梅さんの美味しい食事を堪能しながら、出演者や関係者の方々と実際に経験した怪談を披露しあったのも、楽しい時間でした。
ひとつ、こぼれ話を。
『葵の上』を舞わせていただくにあたり、六条御息所ゆかりの野宮神社へおまいりして、お祓いもお願いしたのですが、そのときお受けしたお守りが、公演当日には無くなっていました。
身代わりになっていただいたのか…、怪談の会ならではの現象でしょうか。
今年は11月に、もう一度『葵の上』を舞わせていただきます。
よし梅さんではお座敷で素の衣装、次回は能舞台でかづらをつけて本衣装にてつとめます。
ぜひこちらの『葵の上』も、ご覧いただけますようお願い申し上げます。